従業員代表者性について

本日は、最近訴訟も多い、従業員代表者性について書きたいと思います。
従業員代表とは、法令で定められた方法で選出した事業場の従業員の過半数を代表する者を指します。   

事業場の従業員の過半数で組織する労働組合がない場合、労使協定の締結や就業規則の作成・変更などを行うにあたり、従業員代表の選出が必要となります。

労務担当者は、従業員代表の選出手続きを正しく理解することが大切です。選出手続きを適正に行わなかった場合、企業にリスクが生じる可能性があります。
例えば、従業員代表者性が否定されると、労使協定自体が無効となり、残業代を未払賃金として支払わなければならない、控除していた食事代や社宅代等を未払賃金として支払わなければならないなど
今回の記事では、従業員代表の役割と正しい選出手続きについて解説します。

【従業員代表の役割】
従業員代表は、従業員の意見を取りまとめて企業と協議するなどの役割を持ちます。

従業員代表の主な役割は以下のとおりです。

①労使協定の締結
労使協定とは、従業員代表と企業が話し合いを行い、合意した内容を書面で締結したものです。これにより、労働基準法で定める基準の緩和や、特別な取扱いが認められます。
労使協定には、「時間外労働・休日労働に関する協定(以下、36協定)」のほか、以下のようなものがあります。

②就業規則の作成・変更時における意見書の提出 
就業規則とは、労働時間や賃金等の労働条件や従業員が就業するうえで守るべき規律等について定めたものです。  
就業規則を作成・変更する場合、従業員代表は定める内容について意見を述べ、意見を記した意見書を企業に提出します。 

【従業員代表になれる人】
従業員代表になることができるのは、以下のすべてを満たす従業員です。 

①全従業員の過半数を代表していること
従業員代表は、正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイトなど事業場の全従業員の過半数を代表している必要があります。

②民主的な手続きで選出されていること 
選出方法は、投票、挙手、回覧、従業員による話し合いなどがあり、全従業員の過半数が支持していることが明確にできる民主的な手続きで選出されている必要があります。なお、企業側が特定の従業員を指名するなど、企業の意向に基づき選出されたときは、適正に選出されていないと判断されます。 

③管理監督者でないこと
管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。管理監督者にあたるかは、役職名のみならず、職務内容、責任と権限、勤務態様など、実態により判断します。そのため、従業員代表の選出にあたっては、管理監督者に該当する可能性のある人は避けることをおすすめします。

【従業員代表の選出】
①選出手続き
従業員代表の選出手続きが適正に行われなかった場合、労使協定の締結や就業規則の作成・変更などが無効と判断される可能性があります。たとえば、従業員代表の選出が適正に行われずに締結された36協定は無効です。その状態で法定外労働をさせると法令違反となり、罰則が科せられる可能性があります。
また、従業員代表は、従業員の意思に基づいて選出されていることが必要です。 

具体的な選出手続きの手順の例は、以下のとおりです。

1.候補者を募る
選出の目的を明らかにしたうえで、全従業員に対して従業員代表の候補者を募ります。候補者がいない場合は、従業員同士で話し合い、候補者を推薦する方法なども可能です。なお、管理監督者は候補者となれません。 
また、従業員代表は、労使協定の締結や就業規則の作成・変更の意見聴取といった目的ごとに選出するものとされています。しかし締結する労使協定が複数ある場合など、その都度選出することは煩雑であるため、毎年定期的に(たとえば36協定の締結時期など)複数の目的をまとめて選出することも可能です。

2.従業員代表を選出する   
従業員代表の選出の際には、全従業員に対して、意思確認を行う必要があります。なお、ここでいう全従業員には管理監督者も含まれます。確認方法としては、投票、挙手、回覧、従業員による話し合いなどが挙げられます。その結果、全従業員の過半数から支持を得た候補者が、従業員代表に選出されます。

※全従業員の意思を確認する方法として認められないケース
たとえば、全従業員に対してメールなどで意思確認をする場合、返信のない人を賛成したとみなす方法は認められていません。電話や訪問などにより、必ず直接従業員の意見を確認する必要があります。

②選出単位
従業員代表の選出は「事業場単位」で行います。そのため、本社や支店、工場などが違う場所にある場合はそれぞれでの選出が必要です。また、同じ場所でも労働の状態や業態が大きく異なる場合(たとえば工場の中にある食堂や診療所など)は別の事業場となり、それぞれ選出が必要です。

ただし、別の場所であっても、規模が著しく小さく事務機能がないなどひとつの事業場としての独立性がない事業場については、直近上位の事業場(組織上、ひとつ上に位置する事業場)とまとめてひとつの事業場として扱います。

【従業員代表に対する企業の義務】
企業には、従業員代表に対して以下の対応を行うことが義務付けられています。

①不利益な取扱いの禁止
企業は、従業員が従業員代表であることや従業員代表になろうとしたこと、また、従業員代表として正当な行為をしたことに対して、賃金の減額や降格などの不利益な取扱いをしてはなりません。

②必要な配慮
企業は、従業員代表が円滑に役割を遂行できるように、必要な配慮を行わなければなりません。たとえば、従業員代表が従業員の意見集約などを行うときに必要となる事務機器(イントラネットや社内メールを含む)や事務スペースの提供を行うなどの配慮が必要です。

いかがでしょうか。従業員代表者を事業主が一方的に指名することや、必要な手続きを経ず、毎回同じ従業員を代表者に立て続けると、先述の通りリスクを伴います。

従業員代表者の選出について、「もっとしりたい」、「自社の選出方法は大丈夫?」など御座いましたら、お気軽にご相談ください。