心理的安全性が職場を変える~労務管理の本当の意味とは~

今回は、労務管理について、私が考えていることを書かせていただければと思います。

「労務管理」と聞くと、多くの人は法令順守や残業管理、就業規則の整備といった“ルールを守らせること”をイメージするかもしれません。しかし、労務管理の本質はもっと深く、「人が安心して力を発揮できる環境を、制度と運用の両面で支えること」にあります。そして今、その土台として注目されているのが「心理的安全性」です。
心理的安全性とは、「自分の意見を言っても否定されない」「質問しても恥をかかされない」といった、精神的に安心していられる職場の状態を指します。この考え方が広く知られるようになったきっかけは、Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」という社内研究です。これは「成果を出すチームにはどんな共通点があるのか?」を明らかにするため、180以上のチームを調査したものでした。
当初、研究チームは「頭の良い人が多いチーム」「性格の合う人たちがいるチーム」こそ高い成果を出すはずだと考えていました。ところが、スキルや経歴、性格の傾向とチーム成果の間に明確な相関は見られなかったのです。代わりに成果の高いチームに共通していたのは、「誰もが安心して話し、間違いを認め、協力し合っている空気」でした。つまり、チームの“中身”よりも“関係性”が成果を左右していたのです。
では、なぜ心理的安全性が高いと成果が上がるのでしょうか。その理由は明快です。人は安心していなければ、質問も相談もできません。疑問や違和感を抱えても黙ってしまえば、トラブルの芽は放置され、やがて大きな問題へと発展します。反対に、「こんなこと言っていいのかな」と思うような声が気軽に出せる職場では、ミスが早期に発見されたり、改善のヒントが生まれたりする。これがチームの力につながるのです。
ただし、心理的安全性は「空気づくり」だけで実現できるものではありません。安心して話せる場をつくるには、就業ルールの明確化、相談窓口の設置、柔軟な勤務制度など、仕組みの支えが必要です。そこで重要になるのが、労務管理の役割です。労務管理は、制度と運用を通じて「心理的に安全な職場」を下支えするインフラともいえます。
これからの時代、労務管理は“守りの施策”ではなく、“攻めの経営戦略”として再定義されるべきでしょう。人が安心して本来の力を発揮できる環境づくりが、企業の競争力と持続可能性を支えていくのです。
皆さんはどうお考えになりますでしょうか。

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